|

 広くいろんなアイデアを集めるといった主旨は一見、とても便利で公平なことのように映りますが、 「単に数多くの建築家を紹介してもらうだけのサービス」や「ネット上だけで完結するサービス」は人の手を介さず、ドライで煩わしさがない反面、建築家を決定するまでの実際の作業はすべて建て主自身が進めなくてはならず、絞り込みの作業は想像以上に大変な負担となります。絞り込みきれず中途半端で無責任なサービスに陥っているケースも多く見られます。こういった傾向はユーザにとっても建築家にとっても不利益となります。
また、全国から数多くの取り寄せても、施工の事や土地勘のある風土を考慮した設計者を希望するなどの理由より、結局は近県の建築家に決めてしまう傾向にあるようです。
|
|

 あなたは、実務経験のない学生や売れない自称建築家に数千万円もする財産を託せますか? 昔から仕事がなくて困っている才能ある建築家はたくさんいます。不景気のご時世ですから今はなおさらです。そんな眠った才能をデビューさせるチャンスという意味でも、コンペに参加することでまだ未熟な若手建築家たちがお金の管理を学んだり、プレゼンテーションの技術を磨いたりする場という意味でも、意義ある試みだといわれています。学生とか、まったく家を建てた経験のない設計者たちもコンペに参加しはじめましたし、そういう人が仕事を取ったりするといったケースもでてきています。現状のネットコンペでは、
 |
・建築家の登録審査があまい
|
・登録者数が多いだけで、積極的な活動をする人の割合が少ない
|
・住宅設計ノウハウを充分に有するとはいえない設計者も見うけられる
|
・オープンコンペでは建て主の個人情報が第三者に漏洩する心配がある (ハウスメーカー等の設計者が建築家として架空名義で登録することは容易であるため、営業対象となってしまう)
|
このような状況にある限り、こういったコンペに参加している設計者は未熟な若者や売れない建築家が多くなり、眠った才能に巡り会うケースは希となります。プレゼンの絵は斬新でも設計者として品質やコスト管理、現場監理などの職務を全うできるのか疑問視されています。設計提案の段階で予算設定が甘く、発注の段階で建築費が積み増しされてしまう等の問題が生じています。また現状では、第一線で活躍する建築家や設計事務所は残念ながら参加していないと考えることが自然です。
|
|

無制限に応募を受け付けるタイプのコンペに関して言えることですが、いろんなアイデアを集めるといった目的が裏目となり、現状では応募が殺到しすぎて「行きすぎ」かなと思える作品が多く、質の低下がみられます。
コンペを勝ち抜くために、設計案を内容以上に誇大に表現したCGや模型、きれいに仕上げた図面でのプレゼンテーション。『これは建たないんじゃないのか?』というような非現実的なプランなど。本当に即建築可能な優秀なものばかり並んでいたら、盗用やアイデアの不正使用をされかねませんから、もともとコンペの段階では無理めぐらいでちょうどいいという見方が建築家側にはあります。
ですから、最終形の記された建て売り住宅のチラシやハウスメーカーの提案プランをみて物件を判断するようにはいきません。提案はイメージであり、具体的な最終形は読みとりにくく、プランも独創的である分、聞き慣れない材料を用いていたりして、素人にはイメージがつかみにくいものも少なくありません。また、具体的なプランよりも、設計者のアイディアや主旨、能力、価値観・人柄などを評価して「信頼して任せられるかどうか」という点で建築家を決定する傾向がみられます。設計契約後、大幅なプランの変更が行われることが多く見られるのはこのためです。
素人に対してであれば、建築を学んでいれば学生でもそれなりの見栄えのいいプランは提案できます。その辺りをふまえて、表面的な見栄えに惑わされず、本物の提案を判断するのは容易いことではないといえます。
|
 |
 |
 |
|
|
|